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頭には跳ねっ毛。髪は肩に届くくらいの黒セミロング。
目にやる気が無い、でも可愛い少女がいた。
諸事情により、彼女との関係は省くが
まぁご自由に邪推してくれて構わない。
何故か、僕は、彼女と、海に、向かって、いる。
海。日本語で言うと海。英語で言うとシー。
その他の外国語は知らないので例えようもないけれど、海である。
正確に言うならば、車の中から確認出来るほどに海が近づいてきたと言うのだが。
「サプライズだよ。」
隣でそういう声も、若干喜びにあふれているような気がするとかしないとか。
ただ、急にそんな事を言い出す彼女の方がサプライズに思えて仕方ない。
「サプライズだね。」
けれど話題を合わせる。いつも通りだけど妙に懐かしい感じがした。
そんな相槌を打っておきながら、サプライズってどういう意味だっけ
なんていうど忘れをひた隠しにしておき、僕らは
車を止める場所を探すことにした。
「どこだーちゅーちゅー、ちゅーりんじょー♪」
なんとなく妹さんの真似をして歌ってみた。
「うわへたくそだよ。」
1秒で批判が来た。
「・・・。」
僕は歌うのをやめた。そんな無碍に反論しなくたってさぁ。
センチメンタルまっしぐらの僕のハートはズキズキだった。
「ちなみに駐輪場じゃなくて駐車場なのさよ。」
その語尾は何なのさよ。
「ちゅーしゃ、ちゅーしゃ、注射場はどこだよー。」
そして今度は彼女が歌いだした。
あからさまに漢字が間違っている。
僕か?僕がつっこむべきなのか?
「ついたー!」
「ついたよー。」
「ついたー!」
「ついたよー。」
二人して駐車場についた喜びを交わす。
「いやはや、これでこそ夏って感じだよ。」
暑い車の中、よくここまで来れたと思う。
彼女が言う。
「じゃあ駐車場についたことだし、帰るよー。」
・・・あれ?海は?
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