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頭には跳ねっ毛。髪は肩に届くくらいの黒セミロング。

目にやる気が無い、でも可愛い少女がいた。

諸事情により、彼女との関係は省くが

まぁご自由に邪推してくれて構わない。

今、海。ところにより雨。天気は晴れ。



「水着・・・間違えたぁ。」

彼女が車に戻ってきた際そう言った。

どうやら妹さんの水着を間違えて持ってきたらしい。と本人は言い張っている。

それ着て海に行けば、と言った所。

「・・・バカぁ・・・。」

と胸元を押さえて半泣き状態になっていた。

余るのか足りないのかどっちなんだろう、などという

思春期的発想をしてしまう僕、本当ごめん。

「せっかく買ったのに・・・。何で入ってないよ・・・。」

珍しく、と言っては失礼だが、へこんでいる彼女を見て

僕は何も言葉が思いつかなかったので、

「じゃあさ、今からお店行って買おう?まだ時間あるし間に合うよ。」

と僕がその場凌ぎで言ったら、彼女が頷いた。



数時間後、海の近くの駐車場に再びいる僕達。

「とりあえず、三つ言いたい事があるんだよ。」

彼女が言う。

「ん?」

僕は言葉を待つ事にした。

「時間少なくなっちゃったり、手間取らせたりして本当にごめんね。」

「ん・・・別に、気にしてないからいいよ。」

まじめに彼女が謝るとは思わなかったのでびっくりしてしまった。

「次は、心遣い嬉しかったよ、って事だよ。ありがとぅ。」

「気にすることないのに・・・でも、どういたしまして。」

お礼を言われた僕のほうが照れくさくなったので雰囲気を切る。

「それで、三つ目は」

彼女は僕の荷物を見て

「そっちの・・・水着は?」





結局の所、ほとんど泳ぐ間もなく家に帰った僕達は

疲れが非常にたまった一日となった。

そしてしばらくしてわかった事が少々あった。

「あの水着そのままつけてたら、もうイチコロでしたよ♪失敗でしたかぁ。」

妹さんが実は確信犯だったり(僕の方の水着は単純に忘れただけだった)

彼女が、僕が水着を買いに行こうと提案してくれて

買ってくれたことが非常に嬉しかったと言う事を言っていたらしかったり

(買ってくれたのが嬉しかったのか、何が嬉しかったのかは知らない)

少しの時間しか見てないけど、十分イチコロにされそうだったりと

(何が、という主語は敢えて伏せさせていただいた。)

数々のエピソードが生まれたということ。

そして彼女と僕の絆が微妙に強くなったような、そんな気がしなくもない。

「結局、妹さんがすりかえた水着って、どんなのだったんだろう。」

数日後、水泳の授業で彼女はそれを着ていた。

なるほど。


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