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頭には跳ねっ毛。髪は肩に届くくらいの黒セミロング。

目はたれ目で二重、まぁ可愛い少女がいた。

諸事情により、彼女との関係は省くが

まぁご自由に邪推してくれて構わない。

とある夏の日曜日、和室の離れにたたずんでいた。



「たまには一人でこうやってくつろぐのも、落ち着くもんだなぁ」

家には誰もいない、僕一人だ。

「たまには姉妹で楽しんできます、探さないでください」

と言ったのは妹さん。どう考えても流れがおかしいけど

もはや今更の事なので以下略。

「こけしでも買ってくるんだよ」

でかける寸前の彼女の言葉。

何故にこけし、こけし、こけし。



しかし、まったりと外からの風と太陽を浴びてると眠くなるっていうか。

このままゆっくりと眠るのもいいなぁ。

縁側に座ってそんな事を思う。

とか、そういう事を考えているうちに僕はいつの間にか夢に堕ちていたわけで―



「ふふふ、よく眠ってるね」

うっすらと声が聞こえた気がした。

「そのまま起こさなくていいの?」

似たような声、誰が聞いても姉妹とわかるような……。

「いいよ、たまには休ませてあげたいから」

寝ている僕の頭じゃ何を話しているのかよくわからなくて。

「その配慮をなんでいつもしないのかなー」

知ってる誰かの声なのか、そうでないのかもわからなくて。

「だって、そんなこと悟られたくないから、ね」

誰か大切な人の、昔の話し方を何故か思い出していた。

「あついあつい、あついですねー」

懐かしくて、寂しくて、でもどこか暖かくて。

「何でそんな投げやりな反応なの」

その温もりを感じながら、僕はもっと深い所まで眠っていった。

「いえいえ、気にしないでお兄ちゃんを見守っててあげてください」

きっと目が覚めたら忘れてしまうんだろうな、という事を名残惜しくしながら。

「うん、お疲れ様―」

誰かの、いたわるような手の温もりだけをずっと感じていた。





起きたら、夜になっていた。

「寝過ごしすぎた、かなぁ」

少し日本語がおかしいのは寝起きだからだと思って欲しい。

何か穏やかな気分で空を見上げてみた。

黒い空に浮かぶ月が丸く優しく輝いていた。



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