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頭には跳ねっ毛。髪は肩に届くくらいの黒セミロング。

目はたれ目で二重、まぁ可愛い少女がいた。

諸事情により、彼女との関係は省くが

まぁご自由に邪推してくれて構わない。

通学路で変なものを見た。



「なんだろうあれ……円盤?」

ほんのりと高台にある道路を歩いてる際に、空に浮かぶ何かを見た。

「何か見えるよ、何が見えるよ〜?」

機嫌がいいのか単に意味は無いのか、彼女が韻を踏んで僕に確認してきた。

「あれは……ただのUFOだよ」

肩越しに空を見た彼女は、さもつまらなさそうに視線を戻した。

「いや、ただのって……」

半端無い答えが返ってきて突っ込むことも出来なかった。

「どこにでもあるUFOだよ、コンビニにも売ってるよ」

いや、少なくとも僕は売ってるのを見たことが無い。

「というか知られてたら既にそれはUFOですらないわけで」

Unidentified Flying Objects,略してUFO。

未確認飛行物体、だからね。確認されてたらFOになっちゃうわけで。

フォーを見つけた、になる。

うん、無いな。



そんな下らない事を考えているうちに、空に浮かぶ円盤みたいなものは

既に消え去っていた。

「なんだったんだろうなぁ」

「気にする事は無いよ、日常にはよくあることだよ」

いや、滅多にないと思います。

「宇宙人だって、火星人だって、思ったより近くにいるかもしれないよ」

何故か真面目な口調で彼女が言った。

疑問に思って彼女の顔を見る。

何か不敵に笑って、その目は何を考えているか読み取れなかった。

「実は、私がそうかもしれないよ」

そう言いながら指で小さな輪を作って、僕を覗き見た。

「そう言って、実はそっちだったりして」

いつもの彼女に似つかわしくない笑顔で、そう言った。

それが、少しだけ怖いと思ってしまった。



その後にしばらくして思った事があった。

心の奥底の、そう、選択肢とでも言えるような低い確率の話かもしれない。

もし、彼女が僕にそうであるかも、と言った時に

「何故バレたのか」

という言葉が出てきたら、どうなっていたのだろう。

殻を壊すように、知らない何かが見えたかもしれない。



だけど今となっては解からないことなのだ。

夢の中の事だから。



起きてから、彼女にそう思ったこと、そういう夢を見たことを伝えてみた。

彼女はいつもどおりの笑顔で笑っていた。



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